ドラッケンミラーが「ワクワクする」と言うとき、他の市場参加者はたいてい泣いている。

1992 年のポンド危機、2008 年のリーマン直前、2020 年 3 月のコロナ底——彼の「面白い相場が来た」という発言の後、市場は決まって大きく動いてきた。動いた方向は彼のポジションと一致していた。動いた金額は、他の投資家の血と汗だった。

その男が 2026 年 3 月、Morgan Stanley の “Hard Lessons” シリーズに登場し、こう言った。

Drukenmiller: 巨大な分断と巨大な変化が前にある。向こう 3-4 年の機会に本当にワクワクしている。

70 歳のレジェンドが明るい顔をしている。市場は、この事実を真剣に受け取った方がよい。

「変化」の正体は 3 つが同時に動くこと

ドラッケンミラーが「3-4 年」と区切ったのには理由がある。これからの数年で、3 つの巨大な変化が同時に動くと見ているからだ:

  1. AI と GPU を中心とした技術ディスラプション
  2. 通貨秩序の再編(ドル基軸の揺らぎ)
  3. コモディティの構造的供給逼迫(銅・原油・ウラン・農産物)

3 つのうちどれか 1 つでも、過去 40 年なら「歴史的な事件」と扱われる規模。それが同時に動く。

Voicestack の見立て

「ワクワクする」の意味は、「相場が大きく動くので、正しい側にいる人は儲かり、間違った側にいる人は失う」 ということだ。

平時の市場では、勝ち負けの差はせいぜい数 % だ。大きく動く相場では、その差が桁違いに開く。1992 年のポンドを売っていたか買っていたかで、運用成績は天と地に分かれた。ドラッケンミラーが見ているのは、それと同じ規模の分岐点である。

AI への「気持ち悪さ」を素直に認める

ドラッケンミラーは NVIDIA と Palantir を一時大量保有していた。それを 2025 年後半に大幅縮小した。理由を彼は隠さない:

Drukenmiller: AI 銘柄は disturbingly heated(不安になるほど過熱)だった。

1999-2000 年のドットコムバブル直前、彼は約 30 億ドルの損失を出した。あの時の「過熱を見て見ぬふりした」経験が、現在の早期撤退に反映されている。

ただし彼は「AI 全体を否定する」とは言っていない。NVIDIA からは退いたが、Amazon・Meta・Alphabet——AI を 使う側で稼ぐ企業——にローテーションしている。

Voicestack の見立て

これは「AI バブルは崩れる、だが AI そのものは残る」という洗練された見方だ。

技術革命の歴史を見ると、チップを作った会社より、そのチップで何かを売った会社の方が長期では儲かることが多い。1990 年代のドットコムバブルで、Cisco や Intel のシェアは大きく削られたが、Amazon・Google・Facebook は残った。同じ展開が AI でも起きうる。

NVIDIA を持ち続ければ天井で焼かれる可能性がある。Amazon・Meta を持ち続ければ、AI 革命の果実を持ち越せる。ドラッケンミラーが示しているのは、この ローテーション である。

米国株ロング + ドルショート = 同時に成立する組み合わせ

2026 年のドラッケンミラーのシグネチャー・トレードは、一見矛盾するように見える組み合わせだ:

  • 米国株は買う(経済は底堅く、財政・金融政策ともに支援的)
  • ドルは下がる(外国人の米国債保有意欲が低下、貿易赤字、利下げ織り込み)

普通の投資家は「米国が強いならドルも強い、米国株も上がる」と直結させがちだ。だがドラッケンミラーが見ているのは「米国株は上がる、ドルは下がる、結果として外貨建てで見た米国株のリターンは目減りする」という構造である。

だからヘッジを併用する:

  • :AI データセンターの電力需要急増 + 通貨価値下落の二重ヘッジ
  • ゴールド:地政学ヘッジ
  • 日本株・韓国株:米国比で割安、ドル下落で為替メリット

Voicestack の見立て

へのフォーカスは見落とされがちだが、面白い視点だ。

データセンター 1 棟が、地方都市 1 つ分の電力を消費する。電力網の拡張には、すべて銅が必要。世界中の AI 拡大が、銅という金属を構造的に逼迫させている。「AI バブル懸念」と「銅ロング」は、実は同じトレード——AI そのものではなく、AI が必要とする物理層を買う——という発想である。

これが、ドラッケンミラーが「マクロを微視に接続している」と言われる所以だ。

「逆張りは過大評価されている」

ドラッケンミラーが対話の中で示した教訓は、意外な一言だった:

Drukenmiller: 逆張りは過大評価されている。

ソロス時代から共有してきた考え方として、「多数派の見解は 80% は正しい。残りの 20% に巻き込まれないようにすればいい」というスタンスを再確認した。

これは「トレンドに乗ることを恥じない」という宣言である。投資の世界では「逆張りこそ知性」「コンセンサスは間違っている」という美学が好まれがちだ。ドラッケンミラーはそれを否定する。コンセンサスは大体正しい、ただし、コンセンサスが間違う 20% を見極めることが、運用者の唯一の仕事だ、と。

Voicestack の見立て

2026 年現在、コンセンサスは「ドルは強い、米国株は強い、AI は買い」である。ドラッケンミラーはこの 3 つのうち 「ドル」と「AI(NVIDIA)」 を 20% の例外だと判断した。米国株(=他の AI 関連を含む全体)には乗っている。

これは「コンセンサスの中の、間違っている部分だけ切り出して、そこだけ逆張りする」という非常に高度な作業だ。彼が 70 歳でも現役で運用できている理由が、この対話に凝縮されている。

70 歳の男が「これからの 3-4 年は本当に面白い」と言う。市場参加者は、この発言を、過去 40 年で何度かあった「歴史的な転換点の合図」として受け取った方がよい。


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